家具製作あれこれ ~突板(つきいた)~
天然の木を薄くスライス(0.2~0.4mm)したものを「突板(つきいた)」と呼びます。
その突板を2~4ミリ程度の板の表面に隙間なく張ったものを「天然木突板化粧版(てんねんもくつきいたけしょうばん)」又は、「突板合板(つきいたごうはん)」などといいます。
表面材の一種です。
※この先は、天然木突板化粧版を略して「突板(つきいた)」と呼びます。
イメージしてみてください。
幅の広い皮むき器で、ニンジンや大根をシャーっとスライスします。
ペラペラに薄くて幅広なスライスになります。次にそれを、長方形になるよう端っこをカットして形を整えます。最後に、隙間なく厚紙の画用紙に並べて張っていきます。
この、ニンジンや大根を、天然の木に、厚紙の画用紙は、大きなベニヤ板(薄い木の板)に置き換えてください。これが、突板です^^
一言に人参と言っても、1本1本色や太さが異なるため、違うニンジンで作ったら、きっと雰囲気の違う画用紙になるでしょう。
突板も同じです。例えば、「杉の突板」 と一言で言っても、木が違えばまったく違う表情を見せてくれることもあります。
なので、「杉の突板」と一言で言っても、木目の入り方や色等が微妙に異なります。また、品質によって価格も様々です。(ある程度の目安はありますが)
突板は、表面上は指定した素材の木材だけれど、薄い表面の一枚下はベニヤ板。
なぜ、手間をかけてこんな面倒な加工をするのでしょうか?
その理由は、価格と耐久性です。
同じ木材の、突板と無垢材(木そのものをカットしたもの)の場合。
突板は、反り、割れ等の心配がほとんどありません。しかし無垢材は、使用して半年くらいの間に反ったり、割れたりする可能性があるのです。
原因は、元々の素材の問題、無理な加工、使用環境と素材の相性など様々で、どれも完全に防ぐことはできません。
逆の見方をすると、突板ならば無理ではない加工もあるため、突板は制作の幅が広がるんです。(もちろん、無垢ならではの表情も捨てがたいのですが・・・)
また、無垢材は種類によって違いもありますが、基本的に突板よりもずっと高額になります。
そういった様々な理由から、ナチュラルな木の表情をご希望される方に、突板をお勧めすることが多いです。
突板の使用を希望した家具が発注された場合、通常は材料屋さんに「杉の突板で、これくらいのグレードのものを20枚!」といった形で注文される家具屋さんも多いようです。
ですが、橋本木工は必ず材料屋さんに出向いて、自分の目で確かめながら買付をします。
メラミンやポリエステルなど他の表面材は、発注すればサンプルと同じものが届きます。しかし、突板は同じ種類でも、違う木の場合木目にかなり違いが出る場合があります。
ある程度質の良し悪しは価格で判断できますが、同じ価格帯でも木目や色の違いは結構あるんです。
注文家具は、そのすべてが「世界で一つだけの家具」です。突板を使用した家具は、さらに「世界で一つだけの木目を持つ家具」になります。
だからこそ、ここは絶対に妥協したくないんです。
材料屋さんには、突板見に来るの、橋本さんくらいだよ!といつも喜ばれ(迷惑がられ?)ています。
まれに、お客様が強く希望される場合は、お連れして一緒に選ぶこともあります。橋本木工がいつも突板を買い付けしている材料屋さんは、東京都足立区の中小工場が集まる地域にあるのですが、皆さんがご存知であろう某有名女優さんをお連れしたこともあるんですよ。
この材料屋さん、都内の五つ星ホテルの内装に使用する突板を担当するほど、質の良い素材をたくさん持っているんです。橋本木工もとても信頼を寄せていて、突板はここ!と決めています。
なお、突板はとてもデリケートです。日に焼けたり、汚れや傷が非常に付きやすいため、基本的に塗装を施します。